マクロスF〜サヨナラノツバサ〜

先週からTVシリーズイツワリノウタヒメと予習ばっちりで『マクロスFサヨナラノツバサ〜』をとても期待して見てきた。
イツワリノウタヒメは、昨今のアニメでも出色の出来、完璧な構成だったTV版の1〜7話をベースに非常に上手くまとめており、素晴らしいの一言。
サヨナラノツバサに期待していた点は以下の2点。『歌で戦争を止める』というマクロスの本領が発揮されているか。TV版では描かなかった三角関係の結末を逃げずに描いているか。
三角関係に関しては、アルトが一方を選んだ場合、選ばれなかった方をその分恋愛以外の面でフォローし、ダブルヒロインをどう拮抗させるのかまで期待していた。


が、結論からいうと、がっかりした。ちょっと悲しくなりさえした。
以下、ネタバレありで書くので、未見の方ご注意を。


まず、『歌で戦争を止める』の方。
止めれてないじゃん。
それでは、ダメなんだ。決定的にダメ。
考えてみて欲しい。
数多あるロボットアニメの中で、マクロスだけが持ち得た殿下の宝刀。それが『歌で戦争を止める』、止めても許される世界観だ。
他のアニメで歌で戦争止まったら、鼻で笑われる。
歌という文化でわかりあえるというある意味「ウルトラC」はそれこそしかし、初代マクロスの設定の妙が、説得力を与え、それが許される世界観を構築した。それは、他のアニメにはない強みなはずだ。
TV版を見ると、「歌」は随所に散りばめられているが、歌がマクロス本来の輝きを持つのは、12話におけるランカの星間飛行だ。
ここで、初めて歌で戦闘が止まる。実はそれなでは、ただ戦闘のBGMになっているだけだ。いわば、プロバガンダ、戦意高揚に使われているともいえなくもない。
だからこそ、12話の星間飛行は、ついに殿下の宝刀が抜かれる瞬間であり、個人的にはTV版のクライマックスとも思っている。(これ以外に、今まで恋でも歌でもシェリルに後塵をきしていたランカが逆転に回るというターニング・ポイントにもなるため)
これが、今回の劇場版のクライマックスはどうだ。確かにバジュラに影響は与えているが、その先まで見せないと意味がない。軍とSMSの合同射撃とか尾可笑しいよ。


2点目。三角関係の結末。
確かに描いている。その点は高く評価する。
でも、その後、あれじゃ。。。どうして、そうなった。。。
上述した「選ばれなかった方を上げてバランスを取る」のではなく、「選ばれた方を下げてバランスを取っている。」
それって、マクロスに求められてることなのか。
しかも、主人公を・・・である。この行為が、バジュラとの共生に繋がるのでは尊い行為だが、エピローグでバジュラは母星を去っている。じゃあ、何のために・・・
結果、人間の都合で、先住民(バジュラ)が生地を追われる状態になっており、作品の描こうとしていたことと相反してしまっている。。。そこは、相互理解の上、共生までしっかり描いて欲しい。


あと、三角関係の結末自体は描かれているが、TV版に比べて三人のドラマが弱いので三角関係自体への興味が薄れたのも否めない。アルトの主人公としての葛藤(父との確執、空への憧れ、生来の役者資質)が尺の都合か描写がほとんどない。
ランカにいたっては、シンデレラストーリー、バジュラへの生態兵器に使われていく様子、過去の自分を乗り越えるなどのドラマが全て全部カットされているので、単なる恋する少女な印象。これでは、絶対シェリルに勝てない。
ランカにクリアするべきハードルをつけ、恋愛からそちらに軟着陸させ、二人は普通に幸せになってもよかったのでは。
正直、あの状態にする必然性を、自分はランカへの配慮以外に感じない。
(ちなみに、アルトが帰ってくれば、シェリルも目を・・・の意味不明)
いずれにせよ、ドラマの弱さが目立ち、これでは気持ちよく飛べないんだなあ


ただ、救いがないわけでもない。
エンドロールで流れるシェリルとランカのデュエット。
これが、未来に果たされる二人の夢なのではなんだろう。
この余韻の残し方は悪くない