『母なる証明』鑑賞記

2007年の『グエムル』以来、2年ぶりのポン・ジュノ監督の新作『母なる証明
予告編を見る限りでは、『殺人の追憶』然とした重厚なミステリーかつ人間ドラマを、母という視点から料理しているようで、これは期待大と公開2日目にして早速見てきました。友人と。


率直な感想としては、テンションの下がる映画でした。
思ってたものとは全然違いました。
とはいっても、決してつまらないわけではなく、むしろ最後まで時間を感じさせず、集中して見れたのだけど、なんだろ、この後味。
これは、友人も同意見で、面白くなくはないけど、いや、面白いんだけど・・・的な奥歯にものがはさまったような感じになりましたね、二人とも。


まず、ストーリーが終盤ああいう風に急展開するとはつゆにも思いませんでした。これは、自分だけが鈍かったかと思ってましたが、友人も「そうくるとは思ってなかったな」と言ってましたね。
それ自体は、監督の手腕のたまもので、そうすることでこそ、映画の主題が明確に浮かび上がるので、お見事!とも思うのだけど、一方ですごいやるせない。
この心の行き場はどうすればいいんだよ!と叫びたい。
ホント一人で見ないでよかったよ。


もひとつ、気になったのが、母の愛。
自分ももういい歳になって、そういうのを正面から受け止められるかと思っていたけど、やはりむず痒い。
この作品の母子の関係は確かに多少極端に描かれてはいるだろうけど、しかして普遍性も十分に備えていて、そこがまたなんともいえない。


役者陣の演技はよかったし、カメラワークやカット割もポン・ジュノらしく切れがあり、かつ緊迫感や不安の煽り方もうまかった。全体を通じた陰惨さは、雨の描写、韓国の地方都市の見せ方も含めてさすがでした。


細かいとこに多少ツッコミ所はあるんだけど(捜査が割りとトントン拍子に進むとか、いや、まあ、それも当然なのだけど)それは瑣末なことで、つくりとしては非常に丁寧で、かつ監督のユーモアや個性も感じる。


だから、ほんとはベタ褒め出来るレベルなんだけど・・・出来ない!
とはいえ、見る価値ないかと問われれば、一見の価値は十分にあり。
なんともいえない。
ただ、テンションが下がります。
明日、仕事にいきたくなくなる。


「お母さん・・・どうしよう・・・」という台詞が印象的