最大公約数としての『とらドラ!』

○『とらドラ!』考察
・論旨は『とらドラ!』は色々とシンプルだ。しかし、シンプルだが、素晴らしい!ということです。



○まずシンプルと感じた要因
・原作10巻、アニメ25話という長さに対して、主要人物が大河、竜児、みのり、亜美、北村の5人で話が進むこと(サブキャラはいれど)
・そして、ストーリーの大枠が互いの友人に恋慕し協力し合うが、本人同士が・・・という予想し得た展開になること。
・高校生の学園生活における基本的なイベント以外大きな事件が発生しないこと。
を挙げてみます。



○登場人物に関して
とらドラ!』はライトノベルに少女漫画の手法を持ち込んだ』と評されますが、であれば、竜児や大河にもっと新たな恋のライバルが出現するという展開もあったと思います。特に、竜児と大河に懸想する人物です。少女漫画のセオリーであれば、そういったキャラはとにかく行動的で後から出てきたくせに、ずけずけと介入し、回りも引っ掻き回すと同時に、主人公達には前へ進むきっかけを、読者には今後の展開への期待と不安を与えます。そういう意味では、亜美がそのポジション(竜児に懸想する人物)かなと登場時には思いましたが、彼女の役割は優しいトリックスターであり、その優しさゆえ、介入の仕方は浅かったように思えます。また、大河に懸想する人物はいよいよ現れませんでした。
以上のように述べましたが、これは、『もっとキャラ増やしてもよかったのでは』ということではなく、絞ったキャラクターでこれだけのドラマを綴ったことへの賞賛です。



○物語の展開に関して
これは、基本的に普通の高校生活におけるイベント(文化祭、修学旅行など)と恋愛沙汰(+進路とか家族とか)で構成されてます。なんの魔法も異能もSFも、ありません。未来人、宇宙人、超能力者も現れません。
そこまで極端でなくても、卑近な例ですが、大病とか死別とかそういう明らかなイベントもないんです。
ちょっとエッチい展開とかも特になかったんじゃないでしょうか。
これも、『もっとそういうのあってもよかったのでは』ということではなく、恋愛のすったもんだだけで、これだけ面白いんだということへの感謝です。



○コミットしやすい『とらドラ!
この言い方が正しいのかは分かりませんが、私個人の印象として、『とらドラ!』はシンプルで、言い換えれば、強烈な斬新さはなかったと感じています。
しかし、これは断言できる。間違いなく面白かった。


様々な娯楽の溢れ返る現代では、やはり独創性、斬新さ、今まで見たことのなかったような物語が目を引きます。
しかし、新しさはなくてもシンプルでも、面白い作品は作りあげられる。多くのヒトに受け入れられる。
とらドラ!』を読みながら、また視聴しながら、そんなことを思いました。


シンプルであるがゆえに、多くのヒトにコミットされ、様々な視点で語られる作品なのではないでしょうか。


私も、楽しませて頂きました。ゲーム版買っちゃおうかな。